『俺の話は長い』 ~“ガチでつき合いたくない”と思わせるプロニートを生田斗真演じる~
今宵、どんなドラマを描こう 第4回
■金も根性もないクズ男の恋が始まったかもしれない
そして岸辺家の問題児・主人公の満が醸し出す、絶妙にムカつく屁理屈。これがこのドラマのメインディッシュだ。6年間働いていないというだけで、クズ感は満載なのだけどこの男、無駄に強気で図々しい。それも主演の生田斗真さんが演技力によって、屁理屈や態度に意味を持たせているけれど普通の男性が言ったらどうなのだろうか。
「(姉に対して)仕事と子育てに集中していればいいんだよ。なのに、人の生き様にまでイチャモンつけてきて、身のほど知らずもいいとこだよ」
「よくよく考えたら、姉ちゃんにかかっている習い事や学費のお金、俺の倍かかっていない?(中略)姉弟で教育費が3倍も違うなんて、今からでも3分の2、もらう権利あるよね?」
「最短の時間、最短の距離で歩く人生に面白い木の実は落ちていませんから」
「日常的な食べ物は(食べるかどうかの)許可を取らなくてもいいけど、アイス、プリン、ケーキはスペシャルな食べ物だから、許可を取らないと毎日警察沙汰になるぞ?」
この偉そうな発言をしているのが、まさかの収入ゼロ、母親に寄生しまくって生きる31歳である。これを一般人が言っていることを想像すると、ただの暴言にしか聞こえてこない。いくら顔がイケメンでもつき合うなんて、もってのほかである。たまに飲み屋で会う男性に、いる、こういう満みたいな客がいる。
「あのさ、読者が何を考えれば楽しいかを考えてモノを書いているなんて、それね、洗脳されているだけですよ? 本当に書くということは、スピード良く、バズることだけ狙っていればいいわけ」
「俺はもっと自由に羽ばたきたいと思っている」
こんなことを私に伝えてきた男は、二人ともビジュアル15点のフリーターと失業中の男だった。人と交わることのない生活が脳内を腐らせるんだなーと、怒りを通り越して笑っていたのは私。今や国内に71万人まで市場を拡大させしまったニート。その一部の現状をこのドラマは描いている。
意味がありそうに見えて、そんなに深くもないこと並べて論破。そうすることでしか自己防衛する手段がない、一級品のニートを生田さんが完璧に演じ切っている。ニートの制服・だぼパーカを着こなし、イケメンぶりを消すほどイライラする男を演じているのである。果たしてこの姿が男性の憧れなのだろうかと思うだけで、日本の未来は恐ろしい。
そんな満に第6話では恋の予感がしている。相手は女社長、うまくいけばニートからヒモ男に転がる。期待を裏切らず、ニートの星になりつつある満。信じられないけれど、彼女の前では声色が変わる。なんだか柔和になる。生田さんが、ただのイケメンに見えるシーンが続く。この物語、どんな風に最終回を迎えるのだろうか。想像がつかないのは、満がプロニートだから凡人の私には気持ちが理解できないのだと信じたい。加えて、本物のニート諸君、満と母の房枝(原田美枝子)に共感してはいけない。これはあくまでドラマの世界なのだ。働け。
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